人口問題の危機2042年

河合雅司著の「未来の年表」という本が売れている。今年6月に発刊されて30万部に迫る勢いという。人口減少社会日本でこれから起きることを「おばあちゃん大国化」「国立大学の倒産」「IT技術者の大量不足」「ひとり暮らし社会の本格化」「深刻な火葬場不足」「輸血用血液の不足」など身近なテーマである20の観点から描いている。未来の現実を前に気持ちが暗くなる内容ではあるが、こうした日本を救う10の処方箋が提案されており多少の救いになる。この手の本が30万部近く売れるというのは珍しい。それだけ関心が高いということだろう。この中で、政府が危機感を募らせている2025年問題(段階の世代が全て75歳以上になり、医療費を含めた社会的コストが増大することが予想される)に対して、それより65歳以上の高齢者数がピーク(約4000万人)となる2042年の方が深刻な事態を招くと予想している。いまから25年後である。ここでは、社会の支え手である勤労世代が2025年より1256万人も減るとともに、就職氷河期を経験して思うような職に就けず非正規雇用に甘んじている人が多い団塊世代ジュニアが高齢者の仲間入りし、高齢者の貧困者が大幅に増えると予想されている。こうした人たちの生活保護費用が20兆円規模で必要という試算もあるそうである。こうした段階世代ジュニアがまだ40代で働ける今、再チャレンジ策などの手をうたなければ未来は深刻度を増すと警鐘をならしている。残された時間は多くないのである。

 人口問題は、統計学的に必ず来る未来として予想がしやすい問題と言われている。こうした問題に対して、著者は、いくつかの提言を行っている。この中で、企業にも参考になりそうな項目をいくつか紹介したい。ひとつは、年齢区分の変更である。現在、高齢者は65歳以上ということになっているが、厳密な定義ではない。現代の60代は個人差はあるが、ひと昔前に比べて元気で就労意欲も高い。高齢者の線引きを75歳以上に引き上げてみてはどうかと著者は提言している。厚労省も識者検討会議で同じようなことを考えているようである。こうすると2065年でも高齢者の人口における割合は25.5%まで下がる。単に数字の操作のように思われるが、定義が変われば国民意識や社会制度にも変化が起きてくるに違いない。定年に伴う引退意識しかりである。さらに便利すぎる社会からの脱却を唱えている。24時間営業など日本の過剰とも言われているサービスは今後労働人口が減っていけば維持が難しくなる。著者は24時間が当たり前の発想を捨てるべきだとしている。これは、横並び意識を変え、自社のサービスのコアとなる提供価値にシフトして改めて強みに特化する戦略ともいえる。また、顧客ニーズに対してのマルチ対応も限界がくるとしている。国際分業の視点で得意分野にフォーカスすべきではないかと指摘している。こうした点を考えると、企業の経営や人材戦略も転換していかなければなるまい。オリンピックまではという楽観論が多いが、人口問題の観点からはこれから5年は働き方改革とともに企業にとって重要な戦略転換点になりそうである。

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