日本企業の働き方の実態と取組みから見えてくるもの

今年の産業界は、働き方改革の動きが一段と本格化し様々な企業でいろいろな取

組みがなされ、話題に事欠かない一年であった。こうした中、産業能率大学とHR

総研が共同で実施した「日本企業における社員の働き方に関する実態調査(回答数

307社)」が9月に発表されている。調査対象は企業の人事担当・責任者である。こ

の調査によると、社員の意識・能力について、自分の仕事を抱え込んでしまう人が

多い73.9%、就業時間内に仕事を終わらせる意識が低い人が多い55.7%、計画性や

タイムマネジメント能力が欠けている人が多い55.4%、仕事や業務の進め方を変え

ることを好まない人が多い51.8%といったことが特徴として報告されている。続い

て、仕事や業務の特徴については、特定の個人に依存する業務が多い76.2%、一部

の人に仕事が偏っている70.7%、勤務時間外(早朝や深夜など)でも対応しなけれ

ばならない仕事がある55.4%、突発的な業務発生が多い、休暇の日でも対応しなけ

ればならない仕事がある50.8%ということが上位にきていた。さらに、組織風土と

しては、会議や打合わせにかけている時間が長い65.5%、子細なことでも事前に上

司や組織の承認を得なければならない44.6%、部門間での縄張り意識が強い43%と

いうのが上位であった。

こうした結果に対して、会社がとっている働き方改革についての取組みは、残業

時間の削減、休暇取得促進、勤務時間の柔軟性・裁量性の向上、無駄な業務の削減

が重視されているという調査結果が、日本能率協会から今年10月に報告されている

(第38回当面する企業経営課題に関する調査)。働き方の実態から浮かび上がってくるのは、社員の意識や風土、仕事の適正な割り当て、労務管理、仕事の仕方といったマネジメントの問題である。こうした結果を見るにつけ、現在働き方改革の名のもとに進められている様々な施策は、本質を突いたもののようには思えない。一方で、当面する経営課題として、現場力の強化、働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上といった仕事の仕方や人のマネジメントに関する項目が順位を上げているが、トップにきているのは収益性向上であり、売り上げ・シェア拡大である。つまり、残業せずに仕事をしなさい、柔軟な働き方をさせなさい、休暇はとらせなさい、社員の満足度を上げなさいと言われているが、一方で利益を上げろ、売り上げ、シェアは伸ばせと言われているのである。企業ならば当然ともいえるが、こうしたことを考えると現場の矛盾に満ちた状態が容易に推測できる。

 過去何回か書かせていただいたが、働き方改革の本質は労働に対する時間意識と生産性の問題であり、自社だけでなく、客先、取引先を巻き込んだ仕事の仕方とその職場環境(ICT化含む)変革である。結果として、残業がなくなるのである。どうも行政施策含めて目先にとらわれすぎて本末転倒になっているような気がしてならない。生産性の面では欧米企業に水をあけられているといわれているが、働き方の意識と仕事の仕方の差であることをもっと認識すべきであろう。

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