長時間労働をなくすには

働き方改革の大きな柱として長時間労働の是正がある。この背景としては過重労働による鬱や自殺といった労働安全衛生上の問題やサービス残業の強要、使い捨て雇用といったいわゆるブラック企業問題、子育て、家庭生活との両立を可能にする女性の活躍促進環境整備、先進各国と比較した場合の労働生産性の低さといったことなどがあげられる。長時間労働をなくす取組みは長年にわたって行われてきて、一定の成果をあげてはきている。OECDのデータベースでは、一人当たりの年間総実労働時間は現在1750時間前後とこの20年で300時間程度削減できていることになっている。しかし、正社員のホワイトカラーや流通・サービス・外食業など労働集約的産業に限って言えば、その実感は少ないのではないか?労働生産性も先進各国と比較して日本のホワイトカラーの低さが指摘されている。こうした中、国の働き方改革の取組みが企業にも否応なく広がってきている。

 長時間労働を是正するためには、業務改革と働き方改革といった2つの視点が重要になる。業務改革においては、本来やるべき仕事が効果的、効率的にできているかという機能設計の観点、目的不明瞭、過剰、余剰、重複している仕事がないかを見直す仕事のスクラップ&ビルドの観点、仕事負荷のバランス見直しや集中・分散による効率アップ、責任と権限の明確化、スキルや経験の適正化、外注化といった業務効率化の観点、業務基準の明確化や標準化、システム化といった観点、働く人の意欲喚起やスキルアップといった観点が重要といわれている。一方働き方改革においては、働き方の方針(労働時間の削減目標の明確化、各個人の業務やスケジュールの見える化、突発や緊急の仕事への対応ルール、等)を明確化し、働き方の意識改革を促すとともに計画的に仕事が行われる環境を整備することが重要になる。また、会議の見直し、適切なコミュニケーション手段の活用や情報共有の環境整備といった情報共有・活用の高度化という観点も重要なテーマとなる。特に昨今のICTの発達によって、そのリテラシーの差によって業務の生産性が大きく影響を受けていることは周知の事実である。さらに、会議や打合せスペースの見直し・工夫や有効活用、社員の声を活かしたオフィスの改善改革の推進、種々の制度やツールの活用・運用といった職場環境の見直しも重要である。

 こうした改革を行うにあたってぶつかる課題として世代による価値観ギャップがある。高度成長期を支えてきたシニア層とバルブ崩壊後の中堅層、日本の好況期を知らずに育った平成生まれの若年層ではものの考え方も仕事や働き方に対する価値観も大きく異なることは様々な識者が指摘しているところである。働き改革も頭では分かっても現実に対峙すると相互の合意形成がうまく進まず腰砕けになるケースが多い様である。こうした状況では、トップの強力なリーダーシップが重要である。時短に成功した企業は、こうしたトップのリーダーシップが存在するところが多い。つまり、トップの経営哲学、労働観の問題といえるのである。働き方改革は、トップの本気度で決まるといっていいだろう。

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