働き方改革の本質は昭和型価値観の変革である

2月末から3月上旬にかけて宅配サービスの雄「ヤマト運輸」が宅配サービスを見直すという話題がマスコミを賑わせた。現場の人手不足でサービス維持が窮まり、組合からの提案を受けてのことだという。昨年12月の有効求人倍率は、全国が1.43、東京は2.05、バブル期を上回る状況というから宅配業だけでなく労働集約的な外食、サービス、流通業界等は悲鳴を上げているようである。パート、アルバイトの時給もじりじりと上がり人件費の面からも経営を圧迫しているという。そのつけが正社員の過重労働となっている面は否めない。

一方、日本の労働生産性(就業者1人当たり名目付加価値)はどうかというと、OECD加盟国34か国中22位、先進主要国7か国では1994年から20年連続で最下位という状況という。トップのアイルランドが2015年で153963ドル(1622万円)、日本はというと74315ドル(783万円)、半分にも満たない状況である。OECD平均が89386ドル(848万円)であるから平均にも達していないことになる。この面だけ見ると国際競争の中でとても生き残っていくとは思えない。

労働生産性は、かけた労働時間に対して成果がどれくらい上がっているかを判断する指標である。労働者数に対する付加価値(労働生産性)という観点と労働時間に対する付加価値(人的生産性)という2つの指標が用いられている。この観点から言えば、付加価値をいかに向上させるかと労働の中味をいかに効果的にし、時間を適正化するかが課題となる。現在議論されている働き方改革はともすると労働時間の適正化だけが議論となっているケースが多いが、付加価値の向上と労働の中味の効果性の問題も重要なのである。付加価値向上の問題は組織全体で戦略的に取組むべきテーマであり、顧客や業界特性、ビジネスモデルの有り様といった構造的問題に大きく関係する。冒頭の宅配業界で言えば、再配達問題を解決するために宅配BOX設置やコンビニ受け取りなどに取り組むといったことなどがそれにあたろう。問題は、労働の中味の効果性と労働時間の適正化である。特に労働の中味の効果性の問題は、仕事の仕方(標準化)とツール活用、就労者の意欲・能力に依存する面が大きい。それだけに現場の管理監督者の役割が重要となる。長時間労働を美徳としてきた昭和型価値観を引きずっている人は多い。この価値観をどう変革するかが重要となる。すなわち、時間を最重要の資源として考え、可能な限り短い時間でそれぞれの仕事ができるように仕事の仕方を変革、部下を指導し、人的生産性向上=成長という認識を職場の共通価値観としていく。さらにワークライフバランスを大事にし、それぞれの価値観、家族環境などを尊重して助け合う職場風土を再構築するということである。また、マネジメントの役割は管理から部下の活躍を精神的、育成的に支援するといった面が重要になる。俺は課長だ、部長だといって指示命令すれば済む時代はとっくに終わっているのである。これらを推進するためには仕事以外の個々の身の置き場をいかに創出していくかが鍵となるように思われる。働き蜂の日本人にはつらく難しいテーマでもある。

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