コロナ禍がもたらす組織変化とマネジメント

コロナ禍への対応が自粛から自衛に変わりつつあるがこの原稿を書いている7月上旬時点であるここのところの感染者急増は気になるところである。在宅勤務も首都圏では一時期50%を超える企業が実施していたが、現在では20%強というのが実態のようである。しかし、大手企業を中心に週に数日は出社義務があるものの在宅勤務を続けるという判断をしている企業も多い。極端な事例としては事務所を解約するという企業もあるようで、在宅勤務をベースに仕事をしている企業が注目を集めている。こうした中、組織と社員の関係性も変化しつつあるのではないだろうか。組織には、共通の目的、協働へ向けての役割分担と意思、コミュニケーションの3つの要素が重要といわれている。在宅勤務は、なかでも組織における協働へ向けての役割分担、コミュニケーションに大きな影響を与えているようである。また、組織ストレスの観点からすると違う側面が見えてくる。組織ストレスモデルの研究で知られるCooper&Marshall(1976)は組織ストレスの原因として、①職務に関するもの(仕事をする条件、仕事量、時間的制約、物理的危険、等)、②組織における役割に関するもの(役割が曖昧、役割における葛藤、他者への責任、組織においてどこまで期待されているか、等)、③キャリア発達に関するもの(地位の過不足、職務をいつまで続けられるか、昇進昇格可能性、等)、④人間関係(上司・部下・同僚との関係、責任の重さ、等)、⑤組織構造や風土に関するもの(裁量性の有無、予算、ポリシーなどの面からの行動への制限、効果的な問題解決手段の欠如、等)の5つを上げている。在宅勤務は、こうした5つの原因から見て、職務に関するものでは「適切な仕事量」、「仕事をする環境」といった面、役割に関するものでは、その「曖昧性」、キャリア発達の面では「キャリア形成支援とキャリアパス」、組織構造や風土の面では、「裁量性」や「ネットワーク上の問題解決手段が整備されていない」、といったことがマイナスに影響しているという指摘が多い。言い方を変えればこうしたことが新たな、もしくはさらなる組織ストレスになっているということである。半面、対人関係のわずらわしさや時間や場、職場の関係性からの解放によって自律的仕事の仕方を確立している人には大変生産性高いものになっているという指摘もある。また、組織外のストレスとして家庭要因が大きな影響を持つようになって従来以上に留意する必要が出てきているのも事実である。家庭が職場になっている以上、家庭のことは自己責任とも言えなくなってきているのである。

こうした環境の変化は、組織にどのような影響を与えていくのであろうか?今まで同じ職場でコミュニケーションや空気を共有することで何とはなしに認識できていた組織目的やミッション、ビジョンといったものの共有が在宅勤務を中心とするテレワークによって難しくなることは容易に想像できる。また、日常の対面での相互交流を通して築かれる協働意識もしかりである。こうしたことを考えるとこれからの組織におけるマネジメントの役割として、前述の新たな、もしくはさらなる組織ストレスの軽減とこうした組織目的やミッション、ビジョンをいかに共有してもらい、協働の意思をチーム内に形成していくかということが重要になるのではないだろうか。そして、それは家庭環境に対する目配りを伴うものでなければならないだろう

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