ジョブ型人事制度を検討する前に

在宅勤務が世の中で改めて話題になりだして早6カ月になろうとしている。その間、様々な議論が巻き起こっている。よく話題になることとして評価をどうするかという点がある。在宅勤務では部下の職務行動の実態がつかみづらく能力評価を評価項目としている企業では評価がしにくいということが問題となっている。また、部下の職務成果をどう評価するかについて明確にしていないことからくる評価の曖昧性も指摘されている。こうした中、従来のメンバーシップ型の人事制度からジョブ型の人事制度への転換が必要ではないかというのが世の中の大勢になりつつある。しかし、一方で目標管理制度を「成果をどのように評価するか」という観点から導入している企業は多い。こうした目標管理の観点からすれば部下の職務成果=部下の目標達成度という図式が成り立つのではないかと素朴に感じるのは私だけではあるまい。つまり、現在目標管理を導入しているなら、まずはそれを在宅勤務の観点でうまく適応できるように運用するということで乗り切れるのではないかということである。もちろん、ジョブ型人事制度の場合、それぞれの職務定義をその期待する役割や行動、責任と成果といった観点で明確化することが一般的であるからその整理が十分でない現状ではそううまくいかないのではという意見があるのは理解できる。しかし、目標管理の基本的な考え方は組織目標と個人目標を連動させた目標を設定し、個人はそれに向かって自立的に(自律的視点も重要)仕事を進めることにある。これによって組織において目標連鎖がうまれ、組織統合が図れるとともに、部下を管理するのでなく、部下の自主性、自律性を引き出すことが可能になる。まさに、現在の在宅勤務にフィットした考え方といえないだろうか?

現在目標管理を導入している企業において問題になっていることとして、①上司・部下の目標設定能力が低い、②目標が形骸化して毎回同じような目標になってマンネリ化している、③目標が抽象的で評価基準が曖昧で評価時点で恣意的判断になりやすい、④目標設定プロセスが硬直化して変化に対応した目標修正がしにくい、⑤数値化しにくい職務(定型業務担当の事務職、チーム作業をしている現場の生産技能職、等)について目標設定が難しい、⑥そもそも目標設定する際に土台となる等級制度が十分理解されていない、等があげられる。つまり、現状でも在宅勤務を評価する際に評価根拠となる職務成果=目標達成度についての運用が十分でないとしている企業が多いのである。改めて、目標管理の有り様を各社の実情に照らして見直すことで、在宅勤務の評価の妥当性を高めることは十分できるのではないか。そのためには、評価する側の部下の現状とキャリアアップを考えた仕事の適切な割当て能力を高める必要がある。部下が現在どのような仕事をしてどうように成果をあげているのか、そしてそれは、部下の組織的位置づけや期待(等級や組織格付け)からすれば妥当かどうか、今後どういう仕事をしてもらい、どのような成果を期待していくのか、当たり前のことではあるが、こうした部下視点にたったマネジメントが重要になる。近年、上司になる方々がプレイヤー兼務となってこの視点が大変弱くなっていることが指摘されている。改めて考えていきたいテーマといえよう。

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