いまどきの就活生かたぎ

日本経済新聞社が5月に実施した就活生アンケート結果が5月末の日経産業新聞に掲載されていた。それによると、今年の就活生アンケートは、「残業も自分のためになるなら受け入れ、出世に対しても貪欲」といった結果であったという。働き方改革でワークライフバランスが叫ばれる中、約6割の就活生が月40時間以上の残業もかまわないと答え、9割の学生が出世を望んでいるという。ただし、この調査は首都圏の2019年卒業予定の就活中の学生、院生100名に対して行ったということであるので、そのまま鵜呑みにはできまい。一方で、新卒で入社した会社に長く勤めたいという人は3年連続で減少しているという調査もある。こうした結果を紐解くヒントとして、リクルートキャリア就職みらい研究所の「学生は企業に対して、伝統、安定、確実な経営スタイルを望んでおり、転職を決断したときに通用する人材でありたいという意欲が以前よりも高まっている」というコメントや就職先を選ぶ上での重視要件として「スキルアップにつながる」という回答が(希望する仕事ができる)に続いて2位であったこと(前述の日本経済新聞社調査)が参考になる。つまり、いまどきの就活生は、「いずれは転職や独立したい」「自分の力でいろいろなことをできるようになりたいので残業も厭わない」それゆえに、企業のブランドではなく「自分を育て、高めてくれる企業かどうか」を見極めているといえるのではないか。

 こうしたキャリアアップ志向の若者に対して、一方で気になる話もある。それは、職場で人を育てる責任を担う管理職の人に向き合い、対話する力が弱まっているということである。弊社の取引先企業数社でも最近、深刻な問題だと相談された。特に、仕事に追われていることなどもあって部下への関心が薄い管理職が多いことが気になっているということであった。部下を受け入れ、認め、長所を引き出し伸ばすという「承認力=認めて育てる力」の欠如を指摘する同志社大学の太田教授のような専門家もいる。

承認には、3つの観点が重要であるとされる。まず相手の存在を受け入れ、関心・興味を持つ「存在承認」、次に相手の行動を認め、その変化を望ましい方向へ導く「行動承認」、そして相手の行動の結果を認め、伝え、将来へ向けてよりいい結果を生むように望む「結果承認」である。職場で上司が部下への関心を示さないということは部下の存在を承認していないことを意味する。職場で自分が受け入れられていないことは、部下にとって自己肯定感(自尊心)を著しく傷つける。そして、その行動と結果が承認されないことは自己有能感が満たされず、内発的な動機づけに大きな悪影響を与えることになる。そして、それは自発的に努力し、自律的に仕事に取組む姿勢を阻害する。こうした職場はいまどきの就活生からは真っ先に敬遠される職場といっていいだろう。未曽有の求人難時代である。今一度、自社の人を育て、高める力について見直す必要がある。それこそが、求人における最大の競争優位といえるかもしれないのだから。

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