これからの組織に重要なフォロワーシップ

一般的に組織は、組織を率いるリーダーとそのリーダーの下で活動するフォロワーから構成されているとされてきた。それにもかかわらずリーダーとしての在り方を論じたものは数知れずあるが、フォロワーシップについて述べたものはあまり見かけない。しかし、近年のKelley(1992)らの研究では、「ほとんどの組織においてその成功に対するリーダーの貢献度は20%に過ぎず、残りの80%はフォロワーが鍵を握っている」「組織では、リーダーよりフォロワーが多く、ほとんどの人がフォロワーとして働き、リードもする」ということが指摘されている。こうしたこともあって、近年関心を集めているのがフォロワーシップなのである(松田2018)。Kelleyによれば、」フォロワーの語源は「手伝う、助ける、援助する、貢献する」に由来するという。つまりフォロワーは、人の力が必要なリーダーに手を貸す存在であり、リーダーとフォロワーは相互依存的、互換的関係といえる。因みに、リーダーの語源は、「忍ぶ、苦しむ、堪える」の意味があるという。なかなか興味深い。

 最近、次世代型組織として注目を集めているフレデリック・ラルーが提唱しているティール組織においては上司部下の関係が存在しないという。すべてが個々の判断によって運営され、個が最大限尊重されるという。当然、そこには組織が何ために存在するのかという根本的価値の共有と組織としての共通の文化(行動様式)が必要になり、様々な専門的叡智を参考にした中での個々の判断ということになるようである。こうした組織の存在が注目されているのには、既存の組織形態が人を十分活かし、幸せにしているのかという疑問が背景にある。このような組織形態が一挙に広がりを見せるとは思えないが、その背景にある個々が自律しある秩序の中で主体的に行動することで組織を成立させていくという考え方に賛同する人は着実に増えているように感じられる。

 こうした動きの中で、最近のマネジメントの考え方では部下を主体的行動者として尊重しその自己実現を支援するサーバント型マネジメントのスタイルが改めて脚光を浴びている。そして、その手法論としてワンオンワンといった対話型のマネジメント手法が様々な企業で取り入れられている。こうしたトレンドは、従来型の上下関係を大きく変質させているように感じられる。そこでは、まさに上司の部下に対するフォロワーシップが重要になってきているように思われる。これからの組織においてフォロワーシップが重要になるというのはこうしたことからである。もちろん、リーダーシップは重要である。リーダーシップは組織目標へむけて集団を結集していく対人影響力であるという定義を私は支持しそれが重要であると認識している。しかし、ティール組織にみられるような新たな組織チャレンジにおいては、組織の構成員個々がリーダーでありフォロワーであることが求められる。その両方の役割を自律的かつ互換的に担うことで組織が機能する。そういう意味でこれからの組織では従来型のリーダーシップ論から脱皮した新たな考え方が必要になってきていると考えるのである。

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