ひと皮向けた経験が人を育てる

仕事柄、「人が育たない」、「マネジャーが機能していない」、「できる人に仕事が集中して組織がまわらない」、「効率が悪い」、どうしたらいいかといったご相談をよく受ける。こうした話をよく聞いてみると、いくつかの共通点がある。それは、仕事は、学びの場であることを軽視していることである。70:20:10の法則というのがある。これは、優れたマネジャーの経験を長年調査しているアメリカの研究所の知見から、成人の学びは、70%が仕事経験から、20%が他者を観察したり、アドバイスをもらったりということから、10%が研修や本を読んだりといったことからおこるというものである。つまり、成人は、自分が直接関わった経験や他者を観察したり、研修を受けたりといった間接経験から成長の糧を得ているということである。そして成長の多くは直接の体験によって決まるというのである。

神戸大学の金井教授は、個人が大きく成長するきっかけとなった経験を「ひと皮向けた経験」と呼んでいる。金井の研究によれば、日米のマネジャーが大きく成長する経験には以下のようなものがあるという。

・初期の仕事経験

・人事異動に伴う不慣れな仕事

・はじめての管理職

・海外勤務経験

・ゼロからスタートした経験

・事業の建て直し、立ち上げ

・ビジネスの失敗、キャリア上の挫折、難易度の高い職務、過重な職務

・幅広いビジネスの管理

・上司から学んだ経験

・できない部下、扱いにくい上司

こうした経験を見ていくと、自分が慣れ親しんだ仕事や、自分ができることばかりを繰り返しても成長は期待できないことがわかる。逆に言えば、こうした経験の場をいかに提供していくかが人材育成の鍵を握るということである。仕事の与え方こそ人材育成の要諦なのである。仕事こそ人を育てる教材であり、場であることを認識することから全ては始まるのではないだろうか。そして、意図的にこうした仕事を提供していくことが今、難しくなってきているだけに一層重要になってきているように思われる。

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