プロセス・ロスとプロセス・ゲイン

チームで仕事をする場合、各メンバーがバラバラで、お互いに協力しないなど非効率な仕事の進め方をしていると当然のごとく生産性が低くなる。このような、メカニズムを社会心理学者のスタイナーは「プロセス・ロス」と呼んで以下の公式で、その生産性を予測しようとした。

    実際の生産性=潜在的生産性―欠損プロセスに起因する損失

 つまり、チームの生産性は、ひとり一人がもつ潜在的生産性から、お互いの相互過程で生じるロスを引いたものであるという考え方である。よく例示されるケースとしてプロ野球の巨人がある。資金力にものを言わせて、球界のスター選手を集め球界最強のチーム作りをしているにもかかわらず毎年優勝しているわけではない。つまり選手一人ひとりの能力(生産性)は最強でも、チーム活動というプロセスでは他球団に比べて大きな損失が出て、優勝を逃しているということだろう。企業組織においてチームミングやチームワークが重視されるのもこうした背景といっていいだろう。代表的なプロセス・ロスとしては社会的手抜きがある。これは組織やチームで活動する場合、自分一人が手を抜いても影響はないだろうと考え起こる現象である。こうした人をフリーライダー(ただ乗り)といって組織成果の分配において問題視する人は多い。また、相互の役割分担が適切でなかったり、目指す方向性や目標認識の違いからもプロセス・ロスは生じる。仕事のやる気や仕事の意義の納得感、専門化・分業化による協働作業の減少、職場の多様性の増大などもその原因といわれている。こうしたプロセス・ロスを最小化するためには、お互いの関係性を重視したチーム・ビルディングが重要だといわれている。有名なものとしてBeckhardのモデルがある。これは、チームで活動する場合、その活動を高める4つの次元があるというものである。その根幹となるのは「目標」や「チームビジョン」であり、それがどれくらいチームメンバー間で共有され、自分のこととして当事者意識を持っているかが課題となるという。次は「役割」である。つまり、誰が何を担当するかやそれを行うために必要な責任と権限が明確になっているかということである。ここでは相互の役割が相互補完的にどれだけ柔軟に補われているかが課題となる。3番目に大事なのは「仕事の進め方」である。仕事の手順やフローの適切さ、その手順ヤフローの明確化と共有化、意思決定の仕方、ミーティングの仕方、メンバーマネジメントの在り方等、が課題となる。最後に指摘されているのが、メンバー間の対人感情や価値観の違い、相互の影響度合い、等の関係性の問題である。対人関係に関しては、目標や役割、仕事の進め方を正しく理解していないことから生じることが多いとされている。こうしたチームビルディングの4次元への取組みがうまくいくことでプロセス・ロスは少なくなり、逆にプラスの効果、プロセス・ゲインが生まれる。プロセス・ゲインはチームの中での相乗効果によって、メンバーの潜在的生産性を超えて、実際の生産性が高まることをいうが、ここまで来て初めて組織力が向上したといえるのである。

本コラムを含むメールマガジンを隔月で発行しております。
ご希望の方は hp_info@hpt-lab.com 宛てに、氏名、勤務先を明記の上、件名「メルマガ希望」とし、メールを送ってください。
尚、場合によりお断りさせていただく場合もございます。予めご了承下さい。