マーケティングの新しい潮流:「4P」から「4A」へ

マーケティングの4Pといえば、Product(製品)、Price(価格)Place(流通チャネル)Promotion(プロモーション)の観点から最適の企業戦略を構築する考え方として広く浸透している。これに、People(従業員)Process(業務プロセス)、Sale(販売・営業)を加えて論じられることも多い。こうしたマーケティング理論は、その権威フィリップ・コトラーに代表されるが、販売志向の強さと顧客にいかにして購買させるかという戦術的方策にあまりに傾斜し過ぎたがゆえに、その成果を十分あげてきたとはいいがたいのではないか。その意味では顧客視点が十分ではなかったともいえるだろう。こうした中、顧客中心主義の考え方から新しいマーケティングの枠組みを再構築しようという動きが出てきている。元々は、コカコーラ社がマーケティング戦略として用いてきた「アクセプタビリティ」「アフォーダビリティ」「アベイラビリティ」「アクチベーション」という考えに着想を得て、アメリカのマーケティングの権威、ジャグディッシュ N. シェスとラジェンドラ S. シソディアという2人の学者が理論化したものである。その4Aという新しい枠組みについては、先のフィリップ・コトラーを始め様々な権威が賞賛をしている。

 さて、顧客視点に立った新しいマーケティングの枠組み4Aは、「アクセプタビリティ」「アフォーダビリティ」「アクセシビリティ」「アウェアネス」の4つである。以下のように定義されている。

 アクセプタビリティ:企業の提供する製品やサービスが全体としてどのくらいターゲットとする市場や顧客のニーズや期待にマッチし、またその期待を上回っているかをいう。機能的側面と心理的側面がある

 アフォーダビリティ:ターゲット市場の顧客がどのくらい当該製品やサービスの価格に対して支払うことができ、かつ支払う意思があるかをいう。経済的次元と心理的次元がある

 アクセシビリティ:顧客がどのくらい当該製品やサービスを容易に入手できるかをいう。入手できるという視点と入手の便利さという2つの次元がある

 アウェアネス:顧客が当該製品やサービスの特性をどれくらい知っており(再購入、再利用を含めて)購入・利用しようと思っているかをいう。製品・サービス知識とブランド認知の2つの次元がある

 この4Aの枠組みは、真の顧客中心主義を実現し、マーケティングの存在意義を再認識させるのに役立つとともに、より全体的視点で効果的な資源配分が可能になると期待されている。同時に、組織を考える際に重要な、R&D、生産、購買、顧客サービス、ICT、人的資源活用という機能分野のあり様に大きな影響を与える。誌面の関係で詳しく述べられないのが残念であるが、上記の4Aのどこに優先順位をおくかによって組織戦略が大きく変わるということである。詳細については、「The 4A・オブ・マーケティング 同文館出版」を参照されたい。一見すると当たり前のようではあるが、あるべき企業行動の視点として捉えると奥深いものがある。

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