レジリエント・カンパニーの条件

最近レジリンス(resilience)をテーマにしたビジネス書を本屋でよく目にする。直訳すれば、耐性、回復・復元力、柔軟性、適応力、ストレス耐性といった意味であるが、今求められている人材特性という観点からは、困難に耐え、乗り越えて成長するために必要な「打たれ強さ」や「めげないしなやかさ」といった意味合いで使われているようである。キーワードは「耐性と挽回力」と言っていいだろう。これは、人に限った話ではない。組織においても、こうした能力が注目されている。何が起こっても不思議ではない、予測のつかない時代にあって、企業は3つの状況に追い込まれることが多い。困難に遭遇して市場から撤退する、困難に何とか対応して生き残る、困難をチャンスととらえ飛躍の機会とする、という3つのパターンである。最後の困難をチャンスととらえ飛躍する企業は、まさにレジリエンスの高い企業といえるかもしれない。東日本大震災の悲劇は記憶に生々しいが、あの惨事にあってもいち早く行動を起こし、サプライチャーンの寸断を克服した企業もあった。レジリエント・カンパニーの著者、ピーター・D・ピーターセン氏は、こうした危機に直面したときのストレス耐性や回復力が高く、事業環境の変化に柔軟に対応、その中から次の成長の機会を見出し、社会に貢献している企業を、レジリエント・カンパニーと定義している。こうした企業はどこが違うのであろうか?前述のピーター・D・ピーターセン氏によれば、3つの特徴があるという。

1)企業活動における拠り所ができている

   :顧客と社員を引き付ける魅力となる基盤(価値観:物事に直面したときの判

断基準、使命感、ビジョン)ともいえるものが存在し、信頼関係が構築され

ている。まさにこれがみんなを繋ぎ止める錨の役割を果たすのである

2)自己変革力の高い企業カルチャーを築いている

   :事業環境の変化を素早く察知し、俊敏に行動できる風土を醸成している。別

の言葉で言えば創造性と革新力ということになろうか

3)社会性を意識した企業活動を行っている

 :社会が求める方向と自社の戦略と行動のベクトルが合致しており、社会と

  一体化した動きが取れている。マイケル・E・ポーターは、企業が事業を営

む地域社会の経済条件や社会状況を改善しながら企業の競争力を高める活

動を共通価値の創造という言葉を使って提唱したが、それにも近い考え方

といえるかもしれない

私なりに氏の著述から整理すると上記のようなことになる。こうした3つの特徴がなぜレジリエンスを生み出すのかは興味深いところであるが、価値観を共有し、相互信頼関係にある自己変革力の高い企業が、社会性を持って市場に向き合えば、まず失敗はしないのではないかと思うのは私だけではないだろう。

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