人手不足時代の人事施策

厚労省から昨年1226付で最新の有効求人倍率が発表された。それによると昨年11月の有効求人倍率は1.56倍と10月に引き続き19741月以来の高水準という。これは正規、非正規両方を含む数字である。正社員に限れば1.05倍であるという。有効求人倍率は求職者1人に対して何件の求人があるかを示す数字であるから、数字だけで考えれば希望する人全てに職がある状態といえよう。但し、そこには求職側の希望とのギャップや、求人側の募集要件、選考基準もある。よって単純には考えられないのも事実である。また、地域差も大きい。受理別では、最高は東京の2.12倍、最低は沖縄の1.14倍である。一般的に、有効求人倍率が0.8を超えると質の採用が、1.0を超えると量の採用が難しくなるといわれる。この点からすると現在は質量ともに人の確保が全国的に難しい状況であることには変わりない。

 さて、こうした未曽有の求人難、人手不足時代であるが、求人だけでなくやめられては困る社員を引き留めることにも留意しなければならない。事実、将来を嘱望されていた社員に立て続けにやめられ、あわてて対策を講じている企業も後をたたない。こうした中、人事施策上改めて気を付けなくてはならない点として業績を上げる社員が安定して雇用され、高いモチベーションを維持することがある。そのためには、適正な評価と処遇資産の配分が重要な要素となる。どの企業でも配分のメリハリをつけることを標榜してはいるが、その実行度合は様々である。こうしたメリハリには、社内的配分差(相対的配分差)と労働市場的配分差(絶対的配分差)がある。社内的配分差とは優秀な社員には、他の社員に比べて多くの配分を行うというものである。成果主義の導入が言われて久しいが、この社内的配分差には企業によって考え方の違いが大きくある。一例をあげれば、数百万レベルでの年収差を設けているところもあれば、あまり差のない企業もある。これに対して、労働市場的配分差は、労働市場に比較した高低が基準になる。要は、優秀な社員や標準的な社員にやめてほしくないので労働市場に比較して高く配分するのである。一般的に、処遇にあたっては初任給や昇給率、賞与などは労働市場相場を意識している企業は多いが、年収や月額給与、生涯賃金といったレベルで労働市場(業界、企業規模、学歴、性差、階層、役職、等)を意識して配分に差を設けている企業は少ないのではないか。現在のような求人難時代にあっては、社内的配分差だけでなく、労度市場的配分差も考慮した処遇が重要である。社内的配分差だけで社員の処遇に対する満足度を推し量るのは難しい状況ともいえる。しかし、無い袖は振れないのも事実であるし、既存制度上の制約も多いのが現状であろう。こうした中、非金銭的な報酬や働きやすさが改めて重要な人事施策として注目されるのではないかと思われる。つまり、組織における自らの存在意義や自己有能感、成長感が確認でき、いかに自己実現できる会社であるか、そして社員のライフデザインを支援する諸施策が講じられているかということである。改めて考えるべきテーマといえよう。

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