今こそ組織アイデンティティの再構築を

組織やそのメンバーの行動を説明する概念として組織アイデンティティというものがある。これは、1985年にAlbert&Whetten他によって提唱されたものとして知られている。この概念が注目されてきた背景には、組織を取り巻く環境が日増しに複雑で変化の激しいものになって、そうした環境への対応に追われて自らの組織が持つ本来の強味(自分たちらしさ)を見失いがちになったり、新たなビジネスモデルが登場して改めて自らのビジネスを再定義する必要が出てきていることやM&Aなどの手法によって他の組織アイデンティティを持つ企業を取り込むことで成長シナリオを実現しようとする動きの活発化や逆に売却や撤退などによって自らの組織アイデンティティを再定義し、生き残りを模索している企業が多くなっていることなどがあげられている。組織アイデンティティとは、「我々はどのような存在であるか」「我々はどのようなビジネスを行っているか」「我々は何になりたいか」といった3つの問いへの答えであり、そのコアとなる、独自性や差別性、そして継続性があるものであるとされている。また、組織アイデンティティを明確にせざる得ない状況として以下の6つがあげられている。

1.組織の形成時。創業や新組織の立ち上げ期

2.創業者や中興の祖が組織を去ったとき

3.組織の目的を達成したとき

4.組織が急成長して様々な選択肢が広がっているとき

5.主要な子会社や部門の売却やM&A等によって他の異なるビジネスを買収したとき

6.組織の縮小の局面

これらの6つの状況は、今ビジネスの世界で起きていることばかりである。苦境に陥っている家電業界や業界の垣根を越えて競争が激化している流通業界などはまさにその渦中にあるとってもいいだろう。組織アイデンティティは組織の意思決定に大きく影響する。それは、その組織の人々がどのように情報を処理し、問題解決するかにその組織を構成している人々の認識(自分たちらしさをどうとらえているか)が影響を与えるからと言われている。そして、そこでの脅威は、コアとなる特性(自分たちらしさ)の価値と組織のステータスの低下という側面がある。この脅威への対応を誤ると組織アイデンティティは組織を防御的行動へと走らせ、変化への抵抗を生じさせる要因ともなる。こうした組織アイデンティティに影響を与えるものとして外部からの評価がある。外部からどう見られているかが自分たちらしさを見直す大きなきっかけになるわけである。その意味で顧客や取引先などの外部の意見は貴重である。「我々はどのような存在であるか」「我々はどのようなビジネスを行っているか」「我々は何になりたいか」という内部認識と「我々はどのような存在だと思われているか」「我々はどのようにあるべきだと思われているか」という外部、特に顧客の視点にどのような乖離があるか、自らの「あるべきらしさ」について謙虚に見つめ直す時期にあるといえよう。

本コラムを含むメールマガジンを隔月で発行しております。
ご希望の方は hp_info@hpt-lab.com 宛てに、氏名、勤務先を明記の上、件名「メルマガ希望」とし、メールを送ってください。
尚、場合によりお断りさせていただく場合もございます。予めご了承下さい。