効率人財と効果人財

現在、時間によらない働き方を促進するというホワイトカラー・エグゼンブションを想定した労働法改正をめぐっての議論がかまびすしい。残業ゼロ法案だとか、過労死促進法案だとか本質とかけ離れた議論が多いのが気になるところである。日本の労働基準法は、戦前の生産現場の人たちの健康確保を図ることを目的で作られた工場法の流れをくむものとであることから労働時間管理に関して時間内にどれだけの作業量やモノづくりを行えるかということが重視される効率人財に重きをおいて労働時間規制がなされている感が否めない。時代は変わり、産業構造も大きく変化してきて仕事や働き方は多様化してきている。中でも、時間にとらわれず仕事の成果を問われる仕事をする人が非常に増えているのも事実である。例えば、研究開発や商品開発に携わる人や提案及びコンサル型の法人営業をする人、種々の企画に携わる人、金融ディーラーやアナリスト等数えればきりがない。こうした人たちは、時間にとらわれない働き方をしてその仕事の成果(付加価値)を期待されるところから効果人財と呼ばれている。もちろん、こうした変化に対応してフレックスタイムや裁量労働などの制度改革が行われてきてはいる。しかし、制度がつかいにくい、対象が限定されすぎているなどの批判が絶えない。今回の改正はこうした背景を受けてのものであろう。 今回の改正は、それ以外に「健康確保の徹底」「ワークライフバランスの促進」を合わせて三位一体改革を目指しているという。

 そもそも、法的に労働者は雇用主に指揮命令されるものであり、労働時間は雇用主の指揮命令下にある時間で働くという定義になっている。ICT技術の進展によって、職場は大きく変化してきている現在、こうした定義が現実と整合性がとれているかも考えなければならない時代になっているといえよう。しかし、いまだにモノづくりや加工などの生産現場や作業現場では、機械化が進んだといえ効率人財が主役であることは間違いないし、その生産性の高さは欧米に遜色ないといわれている。一方で日本のホワイトカラーの生産性の低さは先進国の中でも際立っているという指摘があるのも事実である。こうした中、企業では効率人財と効果人財の評価処遇の在り方をどうしていくのがいいか改めて見直しがされている。もちろん、仕事は両面あることが多く、単純にはいかない。そこが悩ましいところといえる。地道に技能を磨き習熟によって生産性を高めていく人財と高度な知的専門性や想像力、問題解決力によって付加価値を生み出していく人財、両方ともに企業には必要である。しかし、これまで後者についての評価処遇はなかなかいいモデルとなるものがなかったといえよう。雇用形態の多様化も進んでいる中、自社の人財活用ポートフォリオをどうしていくか、生産性を今後どう向上させていくかを見直す重要な岐路に差し掛かっているのではないだろうか。

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