役割転換不全

組織では、ある役割を担い一定の成果や能力を発揮すると、認められて次のステージへと昇進や昇格という形で移行する。この場合に新たな役割が付与され、それに順応することが求められる。こうした組織において担う役割の転換をトランジションという。こうした役割の転換場面は、例をあげるならば新入社員から一人前として期待される段階や一般職から管理職へ登用される段階などがそれにあたる。リクルートマネジメントソリューションズ社ではこの段階として10の役割を設定している。すなわち、社会人になったとき、組織人として一人立ちする段階、組織においてメインプレイヤーとして期待される段階、リーダー的存在の段階、マネジメントにつく段階、そして組織の変革を手動していく段階、事業そのものを構想し、変革していく段階、そして高い専門性を発揮して組織業績と事業変革に貢献する段階、卓越した専門性を発揮して事業変革に道筋をつける段階、最後に自社の存在意義を問い直し方向付ける段階である。これらのトランジションにおいて、それぞれ意識と態度の変容が求められ、これらを支援する役割がこれからの人事機能として重要であるとしている。特にここで留意すべき点として、それぞれの段階で、「伸ばすべき意識・態度」と「抑制すべき意識・態度」があるということである。じつはここがトランジションの落とし穴とでもいう点である。優秀な人材が次のステージにいった段階で伸び悩むことは多々あることである。その際に、新たなステージにおいて伸ばすべき意識・態度と抑制すべき意識態度が整理されず、受容できないままそのステージに滞留し続けることで問題が出てくるのである。そのためには、役割転換のサインを上司をはじめとする周囲が本人に送り、役割転換にあたる体験をさせ、そこから学ばさせ、役割転換を促進するように周囲が働きかけを行なうことが求められる。つまり、職場の本人への関わりが役割転換を促進するのである。こうしたことがうまくいかないと役割転換不全となって、せっかくの登用が人材つぶしになることもあるというわけである。人が育たないと嘆く前にこうした職場と人事の機能に問題がないかを考えてみることも重要である。

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