新入社員教育では何を伝えるべきか

新しい年がきて、もうすぐすると新入社員教育の時期となる。入社前に導入教育として実施する企業も多い。一般的に新入社員教育で実施されていることとしては、1)ビジネスマナー 2)社会人・組織人としてのマインドセット 3)社長・事業部長等の講和 4)コンプライアンス 5)企業理念の浸透 6)ビジネス文書 7)タイムマネジメント といったことがあげられている(2013年8月フランクリン・コヴィー・ジャパン社によるネットアンケート n=156人の人事・教育担当者)。規模別にみると大手企業ほどコンプライアンスや企業理念の浸透を重視する傾向が強いことが報告されていた。この手の調査はいろいろあるが、多かれ少なかれ同じような傾向にあるのではないか。

 人が新しい組織に慣れ親しんで、本来の力を発揮できるようになるプロセスを組織社会化というが、新入社員教育は、まさに社会人として組織社会化の最初のステップといっていいだろう。会社によっては内定者時代にこういったプロセスを経験させるところもあるようである。組織社会化の観点に立つと、人がビジネス社会で組織に慣れ親しむためには、思い描いている組織や仕事イメージと現実のギャップをいち早く縮めておくことが重要だと言われている。心理学では、こうした現実とのキャップで人が組織に慣れ親しむ前に組織を離れたり、非適応状態になることをリアリティショックと呼んでいる。こうした観点からすれば、社会人・組織人としてのマインドセットは重要なテーマであると言えるだろう。Katz&Kahn(1978)によれば、組織が生き残るために、組織がメンバーに生じさせる必要がある行動として以下の3つをあげている。

1)組織に所属し、居続けてもらう行動(⇔転職や離職に関わる行動)

2)役割りを果たす行動(⇔怠けや非能率に関わる行動)

3)役割りを超えた組織行動

 この中で役割を超えた組織行動は、革新的/自発的行動と呼ばれ、組織の目標達成を促進する行動といわれている。具体的には、同僚への支援、組織内の秩序の遵守、好意的な組織風土の醸成、組織改善のための創造的行動、さらなる責任を果たすための学習や自己研鑽といった行動が含まれる。さて、こうした行動を生み出すために重要な役割を果たすのが組織風土である。それは、こうした行動を促進させることもあるが、阻害することもある。今、騒がれているブラック企業は、まさに風土が阻害要因になっている企業といえるだろう。こうした組織風土の根幹にあるのは、受容されているかはともかく企業内で共通に認識されている価値観であり、規範である。自社が大事にしている組織風土とは何か、そしてその根幹にある価値観や規範は何か、また、その価値観や規範は自社のどういうメカニズムによって維持・発展し、どんな影響を与えているのか、新しい年度を迎えるにあたって考えてみるいい時期といえるだろう。そして、自社の風土の根幹をなす「組織を維持・発展させている価値観や規範」こそ、新入社員に伝えるべき重要テーマといえるのではないかと考えるのである。

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