生涯賃金減少時代

人事制度構築の仕事をしていて最近気になることのひとつに、総額人件費管理の視点から給与制度を設計することが多くなっていることがある。この考え方は、企業の労働分配率などの指標に基づいて賃金管理をしていくというものである。労働分配率は、企業の生み出した付加価値における人件費の割合をいうが、総額人件費管理の考え方でいけば、労働分配率を基に賃上げや賞与を考えていくため、企業の収益性が昨今のように低下している中では、なかなか賃金を上げるのが難しくなるということがある。事実、厚労省が出している民間主要企業春季賃上げ状況の推移をみると、ここ10年の平均賃上げ率は2%を切っている。昭和40年代には10数%が当たり前だったことを考えると雲泥の差である。こうした点から生涯賃金にどのような影響が出ているかを見てみてみると、労総政策研究・研修機構の統計資料では2000年と2007年では学歴、性別に差はあるのもの2000万程度下がっている。ここには、退職金や年金は含まれていない。新規学卒から定年までに同一企業で働くとしての想定賃金ではあるが、結構衝撃的である。この数字は今後益々下がっていくものと思われる。一方で、msnマネーが発表している生涯給与ランキングでトップのキーエンスは生涯賃金6億1532万と100位にランキングされているNTTデータと3億の開きがある。つまり企業間格差も大きくなっているのである。当然正社員と非正規社員の格差、学歴格差、性格差も厳然と存在する。

こうした事実は何を意味するのか?それは、サラリーマンが生涯稼げる金額が縮小しているということである。このことは消費経済に大きなインパクトを与えていくことは容易に想像できる。そしてそこには、格差があり、企業がターゲットとする人のライフスタイルの多様性を今後ますます大きくしていくに違いない。こうした生涯賃金の変化が経済に与える影響について分析している文献は私が知らないだけかもしれないがほとんどない。人口減少とともに生涯賃金減少の問題も気になるところである。

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