組織における意思決定の要件

組織において様々な役割を担った人々が日々直面している問題には、直接かかわっており、過去にも経験していて容易に明確化できる問題、これを構造化された問題というが、と今まで経験がなかったり、特殊であったり、情報が曖昧で不完全だったりする問題がある。後者を構造化されていない問題という。前者でいえば、顧客と約束している納期に遅れた場合の対応や契約解消を求める顧客対応などがそれにあたる。後者でいえば、新しい市場分野への進出であったり、競合会社との合併などがそれにあたる。問題がこのように2つに分類できるように、意思決定も手順やマニュアルに従って意思決定を行う定型的な意思決定と、独自で、繰り返し行われることがなく、問題に応じた解決策を必要とする非定型的な意思決定の2つに分類できる。一般的に構造化された問題には定型的な意思決定を、構造化されていない問題には非定型的な意思決定を行うことになる。組織に置いては、第一線のマネジャーは、繰り返し生じる身近な問題に対処することが多いため、通常は手順書やマニュアルなどに従って定型的な意思決定を行う。しかし、地位が上がるにつれ、構造化されていない問題に直面することが多くなり、非定型的な意思決定を行う機会が増えることになる。ここにマネジャ-階層における主たる意思決定の役割分担が成立することになる。つまり、下位階層ほど定型的意思決定を担うことが多く、上位層ほど非定型的な意思決定を行うことが多くなるということである。マネジャーは意思決定を定型化することで、自らが判断を下す場面を最小化し、部下に権限委譲できる余地が多くなる。逆に非定型的な意思決定場面が多くなるほど、マネジャーには多くの判断が求められる。そのような能力を持ったマネジャーは少ないため安定した判断が難しくなる。ここに業務方針や手順、ルールの重要性があるのである。

 マネジャーが意思決定を行う場合の条件としては、確実性、リスク、不確実性という3つの観点がある。確実性についてはいうまでもないが、リスクについては特定の結果が起こる可能性を意思決定者が予測できる状況をいう。マネジャーは、自らの経験や補助的な情報などから過去のデータを参照して、それぞれの意思決定案件について確率を予想し、意思決定を行う。特に難しいのは、結果が確実ではなく、可能性を合理的に予測することができない状況である。これを不確実性というが、このような意思決定場面では、限られた情報量や意思決定者の心理的傾向によって判断が下されることが多い。ここに限定合理性という問題が生じることになる。これは、マネジャーの情報処理能力の範囲内で、合理的に意思決定することをいうが、この場合、マネジャーは最良よりもまずまずといった意思決定を受入れやすいと言われている。特に注意しなければならないのは、この際に過剰固執という以前の判断に固執する傾向である。こうした点から集団意思決定の重要性が指摘されているわけであるが、創造性やスピードを要する場合は個人の方に分があるとされている。集団の意思決定が効果的なのは、最終的な判断が容認されるかどうかを基準とする場合とされている。複雑化、多様化している現代社会における組織の意思決定の在り方について考えてみるのも重要な経営テーマといえよう。

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