組織のボトルネック

9月になり秋口の組織改編が気になる時期になってきた。今年度はアベノミクスの三本の矢の影響もあってか、世の中の雰囲気が大きく変わり守りを意識しつつも攻めの体制へどう変換していくかを模索している企業が多いように感じられる。こうした組織改編を考える際に重要となるのは、経営課題の達成のために現行組織のボトルネックがどこにあるかということである。何年前であったか、E・ゴールドラット著の「ザ・ゴール」という本が経営書としては異例の販売部数となったことがあった。いまだに書店にいくとこの関連本が書棚の一部を占領しているのでご存じの方も多いと思う。この本は、生産プロセスにおける制約条件の理論をボトルネック(どこが全体の制約となっているか)という観点からわかりやすく解説したものとして評判になった。つまり、生産プロセスを見直す際には、全体の生産の足を引っ張るボトルネックとなる工程とそれ以外を明確にし、このボトルネック工程の生産性や作業体制や機械化を徹底して行うと同時にその前後の工程管理や作業連携を強化し、こうした取組みを時間という視点によって行い、全体の生産性、効果性を上げるというものであった。実は、組織を検討する際にも、組織のボトルネックがどこにあるかを検討することが必要なのである。特に何があるべき組織行動と成果のボトルネックになっているかを徹底して考え、そのボトルネックの観点から組織全体をどう見直すべきかを考えるという姿勢が重要となる。

日本企業は組織の意思決定が遅いと言われる。意思決定を遅くしているのはどこか、ボトルネックはどこにあるのか、一般的に、意思決定のプロセスは、①問題の認識→②情報収集・分析→③選択肢と判断要素の検討→④判断→⑤組織内での正当化プロセス→⑥指示・命令・伝達といった6つの工程が必要となる。こうした観点で見たときに、日本企業の意思決定のボトルネックはどこであろうか?一般的に言われているのは、④の判断をする人の存在である。つまりは、形の上では決める役割を担っていても、実際に決めることができる人が不足しているというのである。もしこの④判断がボトルネックだとすると、他のプロセスに従事する人が過剰に存在しているのかもしれないなどの問題も見えてくるのではないか。そしてそのことが過剰な情報と意思決定プロセスを生み出し、スピーディな意思決定を阻害しているのかもしれない。また、日本企業は、合議制を重視するあまり、組織内の正当化に時間をかけすぎる傾向も指摘されている。

組織のボトルネックは、短期、中長期で見ていくことも重要である。短期の場合は現行の陣容で対応することが多いが、中長期になると人が入れ替わり、組織も変動することが多い。こうした点を踏まえると、人材育成体制を踏まえてボトルネックを検討することが必要となろう。

組織のボトルネックは、経営戦略の遂行テーマによって異なる。迅速な意思決定なのか、新市場開拓なのか、新商品開発なのか、M&Aの加速なのか等、推進すべき経営テーマに照らし合わせて自社のボトルネックを見定めて組織を見直すことをお薦めしたい。

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