組織の4つの形態

めまぐるしく変化する経営環境にどういう組織形態が最も適合するかについては、様々な専門家が研究成果を世に紹介している。それらは、大きく分けると、

1)機能を重視したもの

2)製品やサービス、事業部門、顧客、テリトリー等の「事物」の観点から製品・サービスをどう効果的に・機動的に開発・生産・販売するかという製品中心のもの

3)機能と事物の両面を組み合わせたマトリックス的なもの

4)自律的つながりとしてのネットワークを重視するもの

に分類できる。それぞれに一長一短があり、その組織の目的、その組織のおかれた経営環境や業態、ライフステージなどによってどの形態がふさわしいか判断していかなければならない。

一般的に、安定した環境では、機能重視の組織が最も効果を発揮するといわれている。この組織では、機能別の能力に基づいて役割分担、予算、給与、昇進などが決められ、機能の上での上司が最も影響力を持つことになる。各機能別に共通の目的を持ちやすく、専門家として得意分野で仕事ができる面がある。働く人にとって安定感、安心感が高いともされている。反面、機能別組織の間で対立が生まれやすく、迅速な方向転換がしにくいという指摘もされている。また、部分最適になりやすく、重大な決断の責任がトップに集中してガバナンスの問題が生じやすい面もある。現代のように環境変化が激しく、全体最適を考えて機動的な決断が求められる時代には問題が出やすいともいえるだろう。

次に製品中心の組織であるが、多くの製品・サービスを扱う企業の場合や顧客ニーズが多様な場合、また顧客あるいは環境の変化が大きい場合に有効だとされている。そういう意味で、今の企業組織はこの形態を土台としているところが多い。この組織形態は環境や技術などの急激な変化への対応がしやすく、組織間調整の必要性が低く、組織間対立が発生しにくいとも言われてきた。また組織のメンバーが組織目標を把握しやすく、幅広い技能を身に着け、より多くの責任を持つことも特徴である。しかし、現在では、製品・サービスの業際化や複合化に対応しにくい、提供する付加価値の統合的再構築ができない、資源の集中と選択の判断などでの組織間利害の対立、スペシャリストが育ちにくいなど、この組織形態の強味であったところが弱みになるケースが相次いでいる。

マトリックス組織は、文字通り、機能関連部門と製品関連部門の両軸で組織を運営していく形態である。両方に権限があり、2つの指揮命令系統が存在することになる。この組織は、熟練度の高い仕事に適していると言われている。環境の変化にも迅速に専門的に対応が可能である。タスクフォースやプロジェクトチーム、製品マネジャー制といった運用の場合もある。この組織の問題は複雑でコストがかかることであると言われている。

最後にネットワーク重視の組織形態であるが、比較的新しい形態として近年注目を集めている。特定のニーズやプロジェクトごとに人、資源を臨時にチームとして集めて活動するという特徴を持つ。権限の所在は状況やプロジェクトによって異なり、自社だけでなく外部のリソースもネットワークに組み入れ、中心となるメンバーの周りにゆるやかなビジネス構造が形成される。最も柔軟性が高く、不可欠な資源を全て集結できるというメリットがある。非公式な権限を認め、内外のスタッフによる頻繁なアイデアや情報交換が行われる。しかし、複雑で導入が難しい、従来の組織構造・風土や価値観とぶつかりやすいなどの問題がある。何より、自律的判断のできる人材がコアとなる必要があり、そういった人間が活躍できる風土づくりが重要となる。

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