組織構造の6要素と昨今の傾向

仕事柄、組織構造の問題を分析・報告することが多いが、組織構造には以下の6つの要素があるといわれている。それぞれの要素についての昨今の動向とともに整理してみたい。

1)職務の専門化:1人が仕事を最初から最後まで行うのではなく、いくつかのス

テップに仕事を分けて各ステップを各個人が別々に行う専門分業化をいう。こ

うした専門化によって効率化が追及され生産性向上に大きく寄与してきたとい

われてきたが、近年ではその弊害(仕事の分業専門化による仕事そのものの魅力

減少、それによって引き起こされる様々な人的問題)が叫ばれ、行き過ぎること

の問題が認識されている

2)部門化:分化した職務をグループにまとめて、共通の課題に対応できるようにすること。職能やプロセス、商品、地理的区分、特定顧客といった観点での部門化が行われている。近年は、職能別部門化が、部門の垣根を超えたチームによって補完されるようになってきており、こうしたクロスファンクチュアルチームの活躍は日産自動車の例を待つまでもなく顕著になっている

3)指揮命令系統:組織のトップから末端の層までつながる権限の系統をいい、誰が誰に報告するかが明確にされることからレポートラインとも呼ばれる。ここでは命令を下し、その実行を期待する権限と権限の上下関係の維持と各業務間の調整に必要な命令系統の一貫性が重要とされていたが、昨今の組織では、組織のマトリックス化や組織横断的なチームによる業務推進体制の隆盛によってこうした概念の重要性は薄らいでいると言われている

4)管理範囲:管理者が効率的かつ効果的に指揮できる範囲をいう。管理範囲は近年広がる傾向にあり、コスト削減、決定のスピードアップ、柔軟な対処、顧客接近、権限移譲といった観点から従業員の権限拡大につながる動きが顕著である。この管理範囲の適正性は、業態や職務の性質や標準化、従業員の能力、ICT化の推進などによって大きく影響を受ける

5)集権化と分権化:組織の1点にどの程度意思決定が集中しているかを表わすのが集権化であり、下位レベルに決定を下す権限がどの程度与えられているかを分権化という。分権的組織では、迅速に問題解決行動が推進され、多くの人が意思決定に関わる。そのため、従業員の自律性や意欲が高まることになる。最近のマネジメント論では、分権化された意思決定を推奨するものが多い

6)公式化:組織内の職務がどの程度標準化されているかを示す概念。職務が公式化されていると、業務の安定性が増し、高度な経験や能力がなくても成果を上げられるメリットがある反面、その職務を担当する従業員の裁量性が低くなり自律性が育ちにくい面がある。公式化をどの程度行うかは業務成果と人の成長・モチベーションの両面から慎重な検討が必要になってきている

以上、組織構造の6要素と昨今の動向について整理してきた。ここから浮かびあがるのは、従来の組織構造では対応が難しい様々な事態が各組織で発生しているのではないかということである。そこには、組織効率や組織の効果性を追求していくとぶつかる本質的な組織というものの問題があるように思える。次回はその点についてふれてみたい。

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