組織統合における5ステップ

最近、業界再編などに絡んで組織統合の話を以前にも増して良く聞くようになった。しかし、M&Aなどを介しての組織統合がうまくいったという話はあまり聞かない。当たり前のことであるが、統合以前は一緒に仕事しようなどと考えたこともない組織同士が一緒になるのである。そればかりか、統合以前は利害が対立していたり、競合関係にある場合も少なくない。特に、同業他社同士が統合する水平型統合は、両者の間は遠く、気持ちや感情の隔たりは大きいのが常である。こうした組織統合に関して、伊丹は、その著書「場のマネジメント 実践技術」で以下の5つのステップを提唱している。

 第1ステップ:「新住所への引っ越し」(仕事の土台づくり)

 :ひとつの船に乗ったという意識の共有。形の上でひとつの船に乗ったという実感が

重要で、それを新住所という表現を使っている。それによって統合された社員にまず

安心感を与える

第2ステップ:「くっきりとモヤモヤの仕分け」(職場環境の整備)

:統合後、先行きが見えない不透明な状態を、モヤモヤを晴らしくっきりさせること

としばらくモヤモヤのまましておくことを仕分ける。これによって一定の変わらぬ

「裁量性」「行動の自由」を保障する。そしてそれによって統合された新組織と社員

の間の信頼を生み出し、統合に対する前向きなメンタリテイを確保する

第3ステップ:「人の編み込み」(人環境の整備)

:組織における人の融合を促進し、タテヨコに人を編み込み、社員同士の信頼を高め

ていく。同時に基本的な情報を共有し、情報の理解・解釈の仕方も合わせて共有する

第4ステップ:「旗印と道筋の浸透」(方向性の共有)

:熟考し改めて方向性を定める・統合組織のビジョン・戦略を示し、ロードマップや

計画を明確にしていく。最終的に目指す姿を共有し、新組織への参加意欲を高める

第5ステップ:「新組織の仕上げ補強」(組織推進力の強化)

:本格的統合へ向けて組織体制や制度・仕組みを補強し、最後の仕上げを行い、それ

ぞれの組織の場において統合シナジーを本格的に生み出していく

 こうした5つのステップ、特に最初の3段階は、個人としての「連帯欲求」への働きかけ、「自由」「安心・信頼」「基礎的情報共有」といった組織において様々な場をマネジメントする基本要件を整備するプロセスと同じといえる。伊丹は中でも「統合前と同じ自由を保障すること」と「新組織への信頼とメンバー相互の信頼」が組織統合の可能性を高めると述べている。スピード優先の時代であるが、組織統合は急がば回れということなのだろう。

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