組織風土改革の要諦

仕事柄、企業風土を何とかしたいというご相談をお受けすることがある。話を聞けば、事業環境が大きく変わり、新たな取組みをしなければならないのだが、経営戦略や事業計画を整理して組織に下してもなかなか実行されず、笛吹けど踊らずの状態で困っているという。その原因を長年蓄積された会社の風土に求めているのである。こうした場合、その戦略のほとんどがお仕着せであり、社風として根付いた慣習や組織の価値観や行動特性と相容れないことが多い。ある建設工事会社では、現場第一主義で職人肌の社風であったが、それを管理本部主導の計画的組織運営に変革しようとしたが挫折している。経営幹部は、自社の企業風土との相性をあまく見ていたのであろう。そこでうまくいかない理由を風土におき、取組みを始めるのである。

特に社外から新たな経営者を招き入れたり、経営者が世代変わりすると往々にしてこうしたことが起きやすいようである。ここで留意すべきは、推進したい戦略や事業計画とこれまで培ってきた企業風土との相性である。そして、経営陣が望ましいと思う企業風土と戦略や事業計画との関係性である。企業風土を変えるのは、生易しいものではない。長年の歴史のなかでよくも悪くも深く根を下ろしている。そういう面から、その好ましい面を自社の強味として活かし、好ましくない面を補完できれば戦略を効果的に推進することが容易になり事業計画の達成は格段に現実味を帯びてくるはずである。つまり、ここで重要なのは、経営戦略や事業計画と企業風土の整合性、相性である。たとえば、緻密な積み上げが必要な戦略や事業計画を必要とするケースの場合、まずは行動、やってみてからという風土の企業では、うまくいかないことが多い。むしろ、許容できる範囲で様々な試行錯誤を促し、その中から取捨選択していく方が効果的であろう。戦略と組織風土を整合させるとうことは、気付けば当たり前のことであるがなかなか難しいことである。

 さて、それでも変えなければならないものはある。企業風土は長く根付いた習慣でもある。例をあげるなら、個人の禁煙と同じであろう。わかっているけどなかなかやめられない。物事を変えるのはつらいことである。こうした場合、経営戦略や事業計画の達成とひもづいたいくつかの重要な行動変化に的を絞ることが重要である。ある企業では、顧客重視の風土を培おうとして、社内の模範となる人たちを面接して、具体的に行うべき重要な行動をいくつか決め、それを徹底して教育したという。また、破産したGMでは、リスクを取ったり、アイデアを自由に交換する大切さを改めて強調することで変革に拍車をかけたということが報告されている。

 組織風土改革は、現在の風土を否定するよりはそのいい面を活かした戦略や事業計画を考え、悪い面を戦略や事業計画の推進にひもづいた具体的行動変化を促すことで変えていく。こうしたことが重要ということである。

本コラムを含むメールマガジンを隔月で発行しております。
ご希望の方は hp_info@hpt-lab.com 宛てに、氏名、勤務先を明記の上、件名「メルマガ希望」とし、メールを送ってください。
尚、場合によりお断りさせていただく場合もございます。予めご了承下さい。