職務設計とモチベーション

およそ、組織の管理者の重要な仕事に、部下の職務設計がある。組織には数多くの仕事が存在する。それらが関連付けられ集合すると職務が生まれる。職務設計とは、様々な仕事を組み合わせてよりよい仕事の仕方を形成する方法をいう。管理者は、環境の変化や組織、そしてその組織の構成員である従業員の持つ能力や価値観、行動特性等を考慮して職務設計することが求められる。その際の重要なこととして、従業員のやる気を引き出すということがある。この点についてJ・リチャード・ハックマンとグレッグ・R・オールダムが職務特性モデルを開発提唱している。彼らによると、どのような職務も次の5つの職務次元で表現できるという。

  1. スキルの多様性:これはその職務を行うのにどれくらい多様な活動が必要とされるかの度合いをいう。それにより従業員は多種多様なスキルと能力を習得し、使用することができる
  2. 職務の一貫性:これはその職務を遂行するのに必要とされる仕事の完全性と明瞭性をいう
  3. 職務の重要性:その職務が一緒に働く人や部署、組織全体、そして世の中において及ぼす影響度合いなどをいう
  4. 自律性:仕事のスケジュールや実施の手続きを決める際に、個々人が持つ自由さ、独立性、裁量の度合いをいう
  5. フォードバック:その職務に求められる活動を実行した度合いや結果がフィードバックされ、従業員が自ら頑張った成果や自らの有効性について直接、明確な情報を得られることをいう

これらのうち、スキルの多様性、職務の一貫性、職務の重要性の組み合わせ方によって意味ある職務(意義実感状態という)が生まれるとしている。つまり、この3つが備わっていると従業員は、その職務は重要で有益でやりがいがあると考えるというのである。また、自律性に関しては、従業員は職務の結果に責任を感じ、フィードバックが得られると自らの行動の有効性を認識できることになるとも述べている。

 従業員のやる気の観点からは、意義実感状態にあり、自律的仕事を通して責任を感じ、フィードバックによって成果を実感できたときに、人は心理的報酬を得るということになるとしている。つまり、これらの3つの要素によって職務の特性が効果的に設計されるとき、従業員のモチベーションは高まり、結果、職務成果が向上、その実感によって従業員満足度への好影響が生まれ、離職率が低下するという循環を生むことになるというのである。

 組織の職務設計や部下への仕事の割当を考える際に参考にしていただきたい点である。

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