職場における上司の役割

最近のアメリカにおける研究で、労働者が仕事における様々な要件で何を重視しているかというものがあった。それによると、典型的な労働者は、以下の順で重視しているという結果であったという。

  1. 経営や上司に対してより強い信頼があること

  2. 様々な課題をこなせる仕事であること

  3. 高い能力が必要な仕事であること

  4. 仕事を終えるために十分な時間があること

  5. より報酬が高いこと

 功利主義的な印象が強いアメリカであるが、労働者が一番に重視しているのが経営や上司に対する信頼感であるのは意外であった。続く2番目、3番目は仕事における成長や自己実現欲求にこたえるものといえるかもしれない。まさに内発的動機の充足が仕事の選択においても重要ということだろう。4番めは仕事のストレスと関係が深い項目である。誰しも時間に追われて余裕のない中で仕事をするのは避けたいであろうから。特筆すべきは、報酬水準がこれらの項目の中で最も下位に位置づけされたことである。従業員は報酬以外のものをより重視していることは日本においても様々な研究結果で明らかになっているが、アメリカにおいてもそれは同じであることが新鮮であった。特に、経営や上司との強い信頼関係がトップにきていることは改めて職場における上司の役割を考えさせられる。

 職場における上司の役割についてのアメリカにおける研究では、管理職の質の違いによって職場の生産性が大きく異なり、特に優秀な部下の能力を引き出すことにおいてその差は顕著であることが指摘されている。つまり、職場の生産性を上げるためには管理者適性を適切に見極めたうえでの登用と能力開発が重要であり、優秀な上司は優秀な部下の能力を最大限引き出す可能性が高いということである。逆に言えば、優秀な人材は優秀な上司につけないと能力開発が十分に行えないともいえるだろう。つまり、優秀な上司は、部下のモチベーション管理を巧みに行うとともに、指導や教育を熱心に行い部下の職務成果を向上させることに長けているということである。それが故に、優秀な素材をその下に配置するとその成長を大きく促進させるということであろう。特に、職務成果の向上においては後者が重要とされている。

 グーグル社の人事施策の先進性については様々紹介されているが、そこでは上司の役割としてまず「良いコーチであれ」ということが重視されているという。また部下のキャリア形成支援、コミュニケーションも同じである。こうした中、日本における上司の実態として、プレイイング業務に追われマネジメント行動に十分な時間がさけず、部下とのコミュニケーションも十分とれない、部下育成において一貫性ある対応が取れていないことが指摘されている。社員の働き方改革が叫ばれている中、最も改革しなければならいのは上司の働き方ではないかと考える次第である。

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