若者が会社を辞める背景

年度が替わり、巷ではいい陽気になり、新入社員と思しき若い人たちが初々しくスーツを着こなし華やいだ感じを醸し出している。毎年この時期になると考えさせられるのが、七五三という若者の離職状況である。これは、入社して三年で中卒者が七割、高卒者が五割、大卒者が三割辞めるという実態を指していうらしいが、こうした人たちが第二新卒者として正規に就職できればいいが、非正規雇用者として甘んじている人も多いと聞く。さて、組織研究の分野に、新しく組織に加わった人が、組織の一員として求められる役割やその組織で活躍するのに必要な要件を身に着け、組織に適応していくプロセスを研究する組織社会化という領域がある。七五三に代表される組織離反者は、こうした組織社会化のプロセスに何だかの問題があったということが推測される。また、離職だけでなく、メンタルヘルス面で問題を抱え体調不良で職場復帰ができないというケースも多いようである。こうした組織社会化のプロセスは、新人のときだけでなく所属組織を変わるたびに誰もが経験することである。近年、各企業の組織構造の変化によって、こうした組織社会化がうまくいかないことが多くなっているように思われる。

 新しい組織に加入すると、多かれ少なかれ、期待と現実のギャップに悩み、苦しむという経験をする。これをリアリティショックという。これをどう乗り越えるかが、組織社会化の第一関門といっていい。そのためには、新しい組織に加入する前に、実態を正しく認識させて予防措置を講じておく必要がある。内定者時代の様々な施策や入社前研修などは、こうした点を踏まえた取組みが重要となる。これは中途採用においても同じである。また、新しい組織に加入後、その組織で活躍するために、仕事に関する事柄や組織に関する事柄を学ぶ必要も出てくる。どんな仕事か、仕事をするのに必要な知識やスキル、職場特有の言葉や専門用語、取引先や競合先、関係部署、顧客などは仕事に関するものとして、上司や同僚がどんな人でどう付き合えばいいか、職場や組織の暗黙のルール、職場内の人間関係や力関係、自分の役割り、組織がどうなっているか、どんな価値観を大事にして、どういう方針や戦略で動いているか、などは組織に関することとして重要である。こうした事柄は、すでに組織になじんでいる人にとっては当たり前で、当事者の困難を理解するのが難しい。そこに組織社会化を阻害環境が発生する要因がある。解決策のひとつとしてこうした学びを支援するメンター制度やブラザー・シスター制度などが導入されている。職場には、昔、こうしたことを指導してくれる上司や先輩社員がいたものであるが、昨今の職場にはこうした存在は期待しにくくなっているようである。こうしたことも離職の大きな原因となっているのではないか。組織社会化のプロセスで学ぶことは、その組織独自のものが多い。であるがゆえに、組織を変わると再学習が必要となる。こうした学習を支援する上司や先輩の役割りは重要である。改めて考えてみたいテーマである。

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