設定型問題と発生型問題

 現状とあるべき姿のギャップを問題というが、その問題にも設定型の問題と発生型の問題があることはあまり区別されずに扱われていることが多い。設定型の問題とは、将来のあるべき姿を描いてそれと今を比較して問題を定義するというものである。発生型の問題は、今のあるべき姿と現状を比較して問題を定義する。つまり、設定型の問題が将来から今を考えるのに対して、発生型の問題は過去からの延長線上で問題をとらえるのである。一般的に発生型の問題に対しては日本人は過去様々な取組みを行い大きな実績をあげてきた。しかし、ここにきてその限界が叫ばれるようになってきた。例えば、現在、インターネットに様々なモノがつながり、第4次産業革命ともいうべき動きが産業界に広がりつつある。これは、ネットワークで情報をつなぎ、コンピュータ、人工知能を駆使して生産や流通などの自動化を最適なレベルまで引き上げることを意図した動きとされている。最初の動きはドイツで始まったというのが世の認識である。この動きに日本は立ち遅れているといわれており、危機感を持つ人が増えているという。これをインターネット4.0と呼んでいる人もいる。まさにこの動きは、将来から今を考える設定型の問題解決思考が求められる事案といえるだろう。過去を遡ると、この世の春を謳歌した電機業界が、あっという間に凋落し経営危機が叫ばれるまでになったことや携帯電話がスマートフォンに取って代わられあっという間にアップル社に席巻されたことなどが思い出される。これらは過去からの延長線でしか問題をとらえず、将来から今取り組むべき問題を見なかった悪しき例といえるだろう。今、心配な事案として自動車がある、数十年先をにらんで今取組むべき問題の本質をとらえている企業がどれだけいるだろうか?自動車産業は日本の基盤産業である。それもそのすそ野はあらゆる産業に広がっており、もし自動車産業がダメージを受けることになると先に述べた電機業界とは比較にならない影響があるといわれている。将来を危惧するのは私だけではあるまい。

 過去の延長線上だけでは、将来が描けない時代になっている。発生型の問題解決に秀でている日本人にとって受難の時代といえるかもしれない。この受難を乗り切るためには、同質性を排除し、様々な考えを受け入れるダイバーシティが欠かせない。そして、過去のしがらみや成功体験にとらわれない柔軟な発想が重要となる。そのためには、学校教育を含めて教育の在り方を抜本的に見直す必要があるのでないかと考えている。今、起きている変化や事象を白紙で客観的に観察し、その未来を感じ取り、その意味するところを内面に顕在化させる感性を磨く教育が必要になってきているのである。過去の延長線上ではない変容やイノベーションを起こすための原理と実践方法を明示したU理論ではこのプロセスをプレゼンシンクという言葉で表現している。ただ、ひたすら観察し感じる、そしてそこから内省し、来るべき未来を浮かび上がらせ、それを具体化していくというU理論ではこの3つのプロセスによって出現する未来からの学習が可能になるとしている。英知出版からC・オットー・シャーマー他著「出現する未来から導く」という本が出ている。一読をお奨めしたい。

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