部長層が日本企業再生のキーマン

近年、企業の方々とお仕事をさせていただいて感じることのひとつに、組織的意思決定

や合意形成が非常に難しくなってきていることがある。卑近な例でいえば、自民党に敗れ去った民主党政治を思い浮かべていただきたい。これと同じことが今、企業でも起きているのである。

エドガー・E・ローラーという組織論の権威が次のようなことを言っている。「ある技能について、水平方向及び垂直方向に学習を行うことは、組織業務や管理の方法、組織を支える情報システムに対する従業員の考え方を大きく変化させる。それは、組織が抱える問題を効果的に解決することにつながる。視野が広くなることによって、従業員はより革新的な業務改善を実施するようになり、より効果的な問題解決が可能になる」つまり、社員が仕事を行う領域や技能を意図的、戦略的に拡大することで、業務革新や問題解決が可能になるということをいっているのである。日本企業は、こうしたことを以前はゼネラリスト養成を意図したキャリアローテーションや集合教育の場などで行っていた。しかし、バブル崩壊後の失われた20年で、日本企業の人事施策は大きく変わった。成果主義的人事評価の推進、属人給から仕事給への転換、階層のフラット化と管理職のプレイヤー化、雇用の多様化とアウトソーシングの活用、教育のそぎ落とし(特に階層別教育)などである。

こうした一連の施策によって、組織には先を見通した人的投資を行う余裕がなくなるとともに、組織間利害や問題を調整する機能が形骸化しているように思われる。仕事のできる人に業務が集中しているのも共通する特徴である。特に気になるのは、組織内の縦横のコミュニケーションがうまくいっていない企業が非常に多いことである。階層でいえば組織的に影響の大きい部長層が気になる。組織利害の中心にいる層だけにこの層の相互理解と連携がうまくいかないと組織は硬直する。なぜなら物事を具体化して推進していくための合意形成力と段取り力、実行力が最も求められる層だからである。部長同士会議などで顔を合わせることは多いはずであるが、個々が抱えている問題を相互に相談しあうことはほとんどないのではないか。また、彼らは忙しいのも事実である。とにかく会議が多い。少なくとも私が関わらせていただいている企業では顕著である。そのことが、時代の変化への対応を遅らせ、経営施策を具体化するための組織間利害や調整を阻害しているのにである。部長層の役割見直しと戦略的連携強化、そして人事交流が日本企業の再生を握るひとつの鍵だと思われる。

本コラムを含むメールマガジンを隔月で発行しております。
ご希望の方は hp_info@hpt-lab.com 宛てに、氏名、勤務先を明記の上、件名「メルマガ希望」とし、メールを送ってください。
尚、場合によりお断りさせていただく場合もございます。予めご了承下さい。