ICTがもたらした社会の変化

先日、弊社のパートナー企業であるICT分野を専門としたマーケティングコンサル会社の15周年記念のイベントがあった。そこでは、そのコンサル会社の社長から社会の変化とこれからの有り様についての問題提起の後、そうした社会の変化をどう起業機会として捉え活かすかの事例として2社のスタートアップ企業のプレゼンがあった。その後、それらを受けてシステム、マーケティング、コンサル、起業の専門家のパネルディスカッションが繰り広げられていた。これらの中で一貫して提唱されていたのは、社会が資本主義の運用に適したピラミッド型の構造から、自律分散型のネットワーク構造に変化してきているということであった。そしてそこでは、つくる側、売る側、買う側といった立場の違いの垣根はなくなり、誰でもがつくる側になり、売る側になり、買う側になるといった状況が生まれ、そこでのキーワードは「共創」であるという。確かに、最近話題のシェアリングエコノミー(不特定多数の人々がインターネットを介して乗り物・スペース・モノ・ヒト・カネなどを共有できる場を提供するサービスのことを指す)といった分野では、仲介サイトを通して、誰もが、部屋や車、服、等の所有物や自らの経験や能力をネットを介して提供することが出来るようになってきているし、その場で、お互いの智慧や経験を活かした商品やサービス開発がオープンになされるようになってきている。また、ブロガーやユーチューバー等、こうしたネット社会のインフルエンサーも注目を集め、影響力を増している。こうした中、重要なのは、それぞれの社会への問題意識や思いであり、そこにストーリーが介在することで人が集い、場が生まれるという。そしてそのストーリーを実現するプロセスを支援することに新たなビジネス機会が生まれるという主張であった。こうした場をいかにうまく提供できるかにこれからの起業機会として可能性を感じているということであり、そこでは、モノやサービスを提供し、お金をいただくというこれまでの図式を越えた新たな仕組みが生まれつつあるという。そして、その将来は、意外にも江戸の庶民文化にヒントが隠されているという。高度産業化社会の前の、人と人の生活の有り様に。その時代の不便をICT技術が解消するため、人と人が生活者として改めて向き合い、関係性を再構築する社会がくるといった話であった。

こうしたネットワーク社会では、そこでの互恵関係がお互いの信頼を繋ぐ上で重要になる。それがレーティングによってランキングされたり、評価されることになる。そのため、一端ネット社会でダメ出しの烙印を押されると排除の論理が働き復活が難しい状況も生まれつつあるという。若い世代はこうした状況に難なく馴染み、IT機器を自らの一部のように使いこなしている。こうした世代と、これまでの日本を支えてきた世代との意識ギャップも益々激しくなるという。これらのことをから、企業社会におけるこれまでの相互の関係性も変容を余儀なくされることは想像に難くない。今、進行しつつあるこうした社会の変化に耳を傾ける重要な時期かもしれない。

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